この物語はフィクションです。登場する人物,地名,組織等は全て架空のものです。
「言う通りにしろ」
彼はまるで獲物を追いつめるように,ドスの利いた声で言った。
「そんなことしたら…」
「彼のために,相応の代償は払って貰わないとな」
薄暗い部屋に映える,鋭い銀色の光が視界の隅に入った。
「ぁ…あなた分からないの? あの人に利用されているだけよ!?」
彼女は震える声でヒステリックに叫ぶが,
「部外者が口を挟むな」
感情の籠もっていない声と共に,その銀色の光が目の前で鋭利な刃を形作る。
「ひ…っ―――」
「裏切れば…お前自身が死ぬより苦痛を受けることになる」
目の前の餌を待ち焦がれるように,ギラギラした目線が突き刺さった。